今回は、仮想通貨の利益に対する税金対策、節税方法として、中でもまだあまり一般的に認知されていない、
・ビットコイン寄付控除
・エンジェル税制
この2つの節税方法をピックアップしてご紹介したいと思います。
この2つの方法にフォーカスした理由としては、以下の通りです。
・よく知られている節税方法についてはネット上に情報が溢れていること(ビットコイン寄付控除、エンジェル税制については情報が少なめ)
・個人事業者、サラリーマン、など問わず誰でも合法な節税方法として実践できること
・活用するかしないかは置いておいて、こういうお金、税金の使い道もあることを知ってほしい
一番大きな理由は最後の「お金、税金の使い道の選択肢を増やしてほしい」という点です。
それでは、「所得控除」のおさらいから、ビットコイン寄付控除、エンジェル税制、と順に紹介していきます。
仮想通貨に関する税制、雑所得、所得計算方法、節税方法、必要経費については以下の記事にまとめていますのでぜひあわせてご覧ください。

なお、今回の記事は税金に関わる内容のため、参考程度として、実施、行動なさる場合は税理士など専門家に相談やご自身の自己責任のもと情報をご活用ください。
目次
「所得控除」とは?
所得税の税額の計算方法は以下の通りです。
①収入 ー 必要経費 = 雑所得
②雑所得 + 他の所得(給与所得など) ー 各種所得控除 = 課税所得金額
③課税所得金額 × 税率 ー 課税控除額 = 所得税額(所得税として納める税額)
「所得控除」とは、全14種類それぞれの所得控除の要件に当てはまる場合に、各種所得の金額の合計額から各種所得控除の額の合計額を差し引きます。
所得税額は、その残りの金額を基礎として計算されます。
「所得控除」は14種類あります。各詳細は割愛しますが、知りたい方は国税庁webサイトにて確認ください。(国税庁:所得金額から差し引かれる金額(所得控除))
- 雑損控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寄附金控除
- 障害者控除
- 寡婦(寡夫)控除(この控除は女性の場合と男性の場合とで要件に差があります。)
- 勤労学生控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 基礎控除(38万円)
今回注目するのは、「寄附金控除」です。
近年、一般的に多くの人が認知していて、サラリーマンの方でもたくさんの人が利用しているであろう「ふるさと納税」は所得控除の中の「寄附金控除」に含まれるものです。
ふるさと納税については、以下のリンクを参考に。
ビットコイン寄付控除
ビットコイン寄付控除とは?
2018年3月現在、このビットコイン寄付控除についてはまだ開始したばかりで、1つのプロジェクトしか寄付対象がありませんが、今後広がりをみせる可能性を感じ、注目すべき点として今回ピックアップしました。
具体的には、筑波大学・落合陽一准教授のクラウドファンディングプロジェクトにて、ビットコインでの寄付を受付。
ビットコインでの寄付全てが、筑波大学への寄附となり(受け取ったビットコインは円に転換されて筑波大学に入金されます。)、確定申告を行うことにより税制上の優遇措置が受けられます。(国立大学が行うクラウドファンディングにおいて、仮想通貨での寄附を受け付けることは日本初の取り組み)
落合陽一准教授のプロジェクトに寄付 = 筑波大学への寄付
となり、寄付したビットコイン(日本円換算、または日本円)が寄付金控除の対象となるスキームです。
参考リンクは以下のとおりです。
筑波大学・落合陽一准教授のプロジェクトでビットコイン寄附の受付
具体的なクラウドファンディングの内容は以下の通りです。
〈プロジェクト概要〉
・タイトル:「デジタルネイチャー「計算機的多様性」の世界へ」
・実行者名:落合 陽一氏(博士/筑波大准教授)
・目標金額:1500万円(日本円相当額)
※本件への寄附金額は、ビットコイン決済時のレートで日本円転換された金額が合計寄附金額として加算されます。
・募集期間:2018年2月21日(水)~2018年4月27日(金)23時(65日間)
・形式:寄附型 / All or Nothing
・プロジェクトURL:https://readyfor.jp/projects/ochyaigogo2
・ビットコイン寄附URL:http://fundflyer.bitflyer.jp/contents/yoichi_ochiai/006/
このプロジェクトが発表された直後のネット配信番組で、落合陽一氏がプロジェクトについて説明していますので、興味がある方はぜひご覧ください。
LivePicks「WEEKLY BITCOIN拡大版」2018年2月21日(水)放送アーカイブ
動画開始から3分経ったあたりから10分程度、ビットコイン寄付控除の話題です。
ビットコイン寄付控除の節税効果は?
では、実際にビットコイン寄付控除をした場合の節税効果はどの程度あるのでしょうか。
大枠としては、同じ「寄付金控除」の「ふるさと納税」と似たようなかんじと捉えてもらってよいかと思います。
・ふるさと納税
寄付した金額に応じた所得控除+返礼品がもらえる。
・落合陽一氏プロジェクトのビットコイン寄付(日本円の寄付もあります)
寄付した金額に応じた所得控除+フィードバックが受けれる。
所得控除は、総所得金額等の40%を上限とした寄附金額について、「寄附金額-2,000円」の額が所得から控除されます。
例えば、
総所得:500万円
寄付金額:50万円相当のビットコイン
の場合、
50万円 ー 2,000円 = 498,000円
となり、498,000円が所得から控除されます。
寄付金に応じた落合氏のフィードバックの例は以下の通りです。(プロジェクトページ)
・50万円相当のBTC寄付 → 「サイト上のできるだけ目立つ場所にロゴ(お名前)を掲載します」
・150万円相当のBTC寄付 → 「落合陽一が出張講演会をします!」
・200万円相当のBTC寄付 → 「あなたがプロダクト化してほしいことをヒアリングして頑張って研究します」
それぞれおもしろいですよね。
出張講演会で営利活動はできない、研究結果のプロダクトの権利や譲渡なし、など営利目的では利用できない条件ではありますが、落合氏の知名度やスキルを活用できるのであれば、何かの宣伝につなげることもできそうですし、新しい価値を生み出すことにもつながります。
何に使われるか不透明な税金を納めるよりも、落合氏のアウトプットにつながる寄付という形で貢献する方がおもしろいと思う人も少なくないのでは。
ビットコイン寄付控除の優遇措置の内容
クラウドファウンディングのページ下部に掲載されているので、詳細は該当ページをご確認ください。
以下、一部抜粋の内容です。
優遇措置の内容
■ 個人でご寄附をされる場合
− 所得控除
所得税法上の「寄附金控除」の対象となる特定寄附金(所得税法第78条第2項第2号)の税法上の優遇措置を受けることができます。具体的には、総所得金額等の40%を上限とした寄附金額について、「寄附金額-2,000円」の額が所得から控除されます。
− 住民税の軽減
お住まいの都道府県・市区町村が、条例で筑波大学を「寄附金税額控除」の対象として指定している場合、総所得金額等の30%を上限とする寄附金額について、下記の金額が翌年の個人住民税額から控除されます。
・都道府県が指定した寄附金 [寄附金額 - 2,000円]×4%に相当する額
・市区町村が指定した寄附金 [寄附金額 - 2,000円]×6%に相当する額
− 計算例
課税所得500万円でつくば市にお住まいの方が、10万円寄附された場合の計算方法は以下のとおりです。
(所得税の軽減額)
・寄附していない場合
5,000,000円×20%(税率)-427,500(控除額)=572,500円
・10万円寄附している場合
{5,000,000円-(100,000円-2,000円)}×20%-427,500(控除額)=552,900円
572,500円-552,900円=19,600円(所得税の軽減額)
(個人住民税の軽減額)
(100,000円-2,000円)×10%=9,800円(個人住民税の軽減額)です。したがって、つくば市にお住まいの方が10万円寄附された場合、 19,600円(所得税の軽減額)+9,800円(個人住民税の軽減額)の合計29,400円が税制上の優遇措置による軽減額となります。
※上記はあくまでも目安です。実際は収入の種類、各種所得控除等により変動が生じることがあります。
エンジェル税制
エンジェル税制とは?
次は、エンジェル税制について。
エンジェル税制と聞くと、エンジェル投資家を連想して、億単位、数千万単位の投資をイメージして、一般人とは縁がないイメージが強いと思いますが、実はそんなことはないんです。
50万円、100万円の投資でエンジェル税制の対象となるケースもあります。
エンジェル税制とは、創業促進による経済活性化の観点から、新しい事業に取り組む創業間もない企業に株式投資をする個人投資家に対して税制優遇措置を講じ、起業家への資金の流れをつくることを目的とした制度です。
ベンチャー企業に対して、個人投資家が投資を行った場合、投資時点と、売却時点のいずれの時点でも税制上の優遇措置を受けることができます。
出典:http://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/angel/pdf/angeltax_panf1.pdf
投資額としては、実施するハードルは低いのですが、いかんせん、エンジェル税制が適用される企業が限定されることや、企業側、投資家側、それぞれに申請が必要、など手続き面が複雑な点が大きなデメリットに感じます。
詳しくは経済産業省webサイトにてご確認ください。
エンジェル税制の節税効果は?
では、実際にエンジェル税制で投資をした場合の節税効果はどの程度あるのでしょうか。
こちらも多少条件は変わるものの、ふるさと納税、ビットコイン寄付控除、と似ています。
具体的には、2パターン優遇措置があり、
○優遇措置A: 設立3年未満の新しい事業を実施する企業に「投資した金額 ー 2,000円」が、総所得金額から控除(ただし、上限 1000 万円と総所得金額×40%のいずれか低い金額が上限)できます。
○優遇措置B: 設立10年未満の新しい事業を実施する企業に「投資した金額全額」が、その年の株式譲渡益から控除できます。
例えば、優遇措置Aのパターンだと、
総所得:500万円
投資金額:50万円
の場合、
50万円 ー 2,000円 = 498,000円
となり、498,000円が所得から控除されます。
エンジェル税制の優遇措置の内容
具体的なエンジェル税制の節税内容について。
わかりやすい画像引用と、一部抜粋します。
出典:http://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/angel/pdf/angeltax_panf1.pdf
<投資をした年に受けられる優遇措置>
○優遇措置A: 設立3年未満の新しい事業を実施する企業に投資した金額が、総所得金
額から控除(ただし、上限 1000 万円と総所得金額×40%のいずれか低い金額が上限)でき
ます。
○優遇措置B: 設立10年未満の新しい事業を実施する企業に投資した金額全額が、そ
の年の株式譲渡益から控除できます。
<株式を売却し損失が発生した場合の優遇措置>
対象企業の株式を売却して損失が生じた場合、その年の株式譲渡益と通算できるだけで
なく、その年に通算できなかった損失を翌年以降3年にわたって繰り越し、順次株式譲渡益
と通算できます。
エンジェル税制の活用事例
エンジェル税制と聞くと、数億円、数千万円の投資金がないとできないイメージがありますが、数十万円でも問題なく投資ができ、エンジェル税制の適用対象となります。
経済産業省のwebサイトにエンジェル税制の活用事例が掲載されているので、ぜひ見てみてください。「こんなパターンでも適用されるのか」と思うはず。
- 老舗自転車メーカーが、車イス製造販売に挑戦
- 建設会社が、子会社を設立して、有料老人ホームを開設
- 中小企業3社が連携して、新製品を開発
- 中小メーカーと中小販売会社が連携して、新販売先を開拓
- 青果卸業者が共同で、青果輸出商社を設立して、輸出を開始
- 商店街で、若者向けブティックを誘致
- 共同で、地域ブランド製品を製造するむらおこし企業の設立
一部ピックアップすると、
「2.建設会社が、子会社を設立して、有料老人ホームを開設」のパターンは、会社経営者が本業とは別事業の子会社を設立した時に適用される内容。
「6.商店街で、若者向けブティックを誘致」のパターンは、商店街主要メンバー13人がそれぞれ50万円ずつ商店街の新店舗の会社に出資する内容。
「7.共同で、地域ブランド製品を製造するむらおこし企業の設立」のパターンは、地域の複数の関係者が100万円ずつ共同で出資してむらおこし企業を設立する内容。
いかがでしょう。6,7のパターンなんかは、投資額が50万円、100万円といった内容です。
100万円以内の投資額で、出資した企業や事業と深い関わりができ、節税にもつながる、なかなか興味深いと思いませんか。
おわりに
ビットコイン寄付控除、エンジェル税制について、今回ご紹介しましたが、人によっては落合氏のプロジェクトは感覚が合わないと思う人もいるでしょうし、エンジェル税制は手間が多くて微妙と思われる人もいるでしょう。
でも、通常通りに所得税を納めて、税金の使い道は国任せ、という形も問題はないですが、ふるさと納税と同じで「税金の使い道や納付先を自分で決める」というのは、思いのほか重要な視点であると思っています。
落合氏のプロジェクトをきっかけに、ビットコインをはじめ仮想通貨でふるさと納税や各種寄付ができるようになっていったら、より便利になっていきますし、
エンジェル税制も投資から確定申告の申請までのプロセスがもっと簡略化されれば、利用者は増えていく可能性は感じます。(株式のネット証券のように簡単になるといいのですが)
仮想通貨で得た利益の使い道について、再考する機会となれば幸いです。